実行委員長挨拶

日本保育学会第71回大会
実行委員長 大宮 勇雄
(福島大学 人間発達文化学類 教授)


 日本保育学会第71回大会は、北海道・東北ブロックの主催で、来年、2018年5月12日(土)13日(日)の両日、宮城県仙台市の宮城学院女子大学にて行います。会員の皆様のご参加、ご発表を心よりお待ち申し上げます。
 実行委員長として、ひと言、歓迎のご挨拶を申し述べます。
 今大会のテーマは「保育の新時代へ」です。
 来年は、あの東日本大震災・東京電力福島第一原子力発電所事故から8年目を迎えます。復興は残念ながら、いまだ道半ばです。しかしこの間、子どもたちの幸せと健やかな成長を守るために、保育関係者がどれだけ強い思いで奮闘してきたかを、皆さんで語り合い確かめ合い、未来につなげてまいりたいと考え、このテーマを選びました。
 失ったもの、奪われたものは、言葉では言い尽くせません。しかし同時に、これからの保育にとって、私たちの人生にとって貴重な経験を得ることができました。ようやく、それを語るゆとりがでてきました。振り返ると、私たちが子どもたちの声にどれだけ励まされ、ときには胸を衝かれ、それによって保育がどれだけ踏ん張れたことでしょう。やはり、保育の主人公は子どもなのだ!ということを痛感しました。人と人とのつながりが、避難によって、不安や風評によって断ち切られ分断される中で、保育を通じて、地域との、家庭とのより豊かなつながりをどれだけ努力して取り戻してきたか。それは「たたかい」と言って過言ではありません。新しい時代に引き継ぐべき「私たちの生き様」を記録と記憶にとどめる大会にしたいと考えております。
 「新時代へ」という言葉には、もう一つの意味を込めています。
 日本国憲法の施行から今年で70年。時代をさかのぼると、東京女子師範学校附属幼稚園の創設から141年です。その前半は戦争に突き進んでいった時代でした。倉橋惣三先生が「幼児よ、国家のために遊べ」と書かざるを得なかったことに、その時代の悲惨と痛苦が思われます。後半の70年は、「二度と戦争はしない」との誓いから作られた憲法の下で、ずっと「戦後」であり続けてきました。しかし今、政治の最高責任者が、「国民主権、基本的人権、戦争放棄」を原理とする日本国憲法の全面的な見直しを語る時代が訪れました。まさに、子どもたちに、どのような社会を引き継ぎ発展させていくか、すべての大人に問われています。
 来年から新幼稚園教育要領・保育所保育指針等が実施されます。まさに、新時代の保育の中身が問われています。
 国民主権とは、私たち一人ひとりが、そして子どもたちも同じく、新しい時代を創りだす主人公であるということです。それは規範ではなく、事実です。私たち一人ひとりの努力と創意があってこそ今日の保育があります。新時代の保育は、子どもたちとともに私たちの手でつくるものです。日本保育学会もまた「私たち」です。一つの「コミュニティ」、基本的人権の尊重を掲げる一つのsocietyとして、いかなる保育をつくることに責任を負っていくかが問われています。そうした問いにふさわしい大会をめざして、実行委員会一同、現在奮闘中です。
 皆様、ともに学びあい、議論しあって、未来を作るための歩みをさらに進めていきましょう。